アナグマさんの動物記【Cat】
「うわぁ、もう飲んだの?」
「お腹が空いてたんだね」
とりあえずの空腹が満たされると、辺りを伺う余裕も出てきたらしい。家具の下を覗き込んだり匂いを嗅いだり、下に入ってみたり、忙しそうだ。
「仔猫の好奇心と順応性は、すごいものだね」
「アナグマさん、さっき、どうやったんですか?」
ん?と首を傾げるアナグマに、ディーは言う。
「さっき、猫が落ち着いてったじゃないですか。慣れてるんですか?」
「慣れてはいないよ。ただね、猫というのは、目を合わせた生き物を、本能的に敵と見なすんだ。君も、野良猫に睨まれることがあるだろう?」
「あ、あります。絶対目を逸らさないんですよね」
「目を逸らしたら負けだからだよ。だから逆に、目を閉じたり、顔を背けたりするのが、猫にとっては友好的な態度なのさ」
「へぇ……それで」
ディーは、さっきのアナグマの、ゆっくりとした瞬きを思い出した。
あれは仔猫に対して、『怖くないよ、敵じゃないよ』と言っていたようなものなのか。