桜の咲くころ
シャワーを浴びて、部屋に戻っても、シンはまだ丸まって布団の中にいた。

・・・買い物行くって言ったくせに。

濡れた髪をタオルでクシャクシャと拭きながら、ベットの足元に座ってシンを見る。

「あれ、風呂入ったんだ」

「入ったよ」

「ふーん」

鼻先で軽く流して、そしてゆっくり目をあけた。

「オハヨ」

「おはよう」

「起きないの?」

「ん、手ぇ貸して」

布団の中から伸ばされた手。

甘えんな!!と言いつつ、起してあげようとその手を取った。

「お、重い・・・」

引っ張り上げようとするのにビクともしない。

絶対力入れてるしー!!

「もぉ、せっかく起してあげてんのにぃ・・・もういいっ」

プイッとそっぽを向いて掴んでいたシンの腕を放す。

そして離した手が、逆にあたしの腕を掴んで引き寄せた。

あたしは意とも簡単にベットに倒れこみ、あたたかな布団の中へと引き込まれる。

まるで、そうして欲しいと願っていたかのように、あたしもスッポリとその空間に納まった。

「髪、濡れてる」

「これから乾かすとこだったのー」

「あ、そ」

「ねぇ、シン・・・」

「ん?」

包まった布団の中、シンを見上げてあたしは口を開く。

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