桜の咲くころ
マンション近くのスーパーで、米と鍋と味噌、それと他の食料品を沢山買った。
カゴに入れながら、つくづく生活観のない家だったんだーと思い知らされる。
疲れて眠るだけの部屋、だったしなぁ。
「じゃ、帰ったら特訓な」
「えー、疲れたよ」
「ダメ。俺が旨いって認めるまで何度でもやり直しさせるから」
「何度でもって、仕事は?」
「今日は定休日です。マスターの人間ドックでね」
ニンマリ顔でピースを作る。
本気でやり直しさせられそう・・・。
あたしは大きく溜め息を付いてレジに向かった。
結局、炊飯器とスーパーの袋をあたしに押し付ける事もなく、二人で仲良く分担して持って歩く。
「スーパーのカート、借りてくれば良かったなぁ」
「そうだね・・・」
ズッシリと指先にかかる重みを、何度も持ちかえて耐えていく。
あと少し、エレベーターにさえ乗ってしまえば・・・!!
横を見上げると、炊飯器のダンボールを抱えながら余裕そうにあるくシン。
米の方が重いんじゃない?
なんて、今さら言っても遅いか・・・。
やっとの思いでマンションの入り口にたどり着いたとき、後ろに立つ人影に気づいて振り返った。