桜の咲くころ
「あの・・・失礼ですが、ミ・・カコさんですか?」

あたしと同じ位?

いや、もう少し上かな?

ショートカットの細身の女の人があたしを見つめている。

患者さん、でもないか。

薄いピンクのニットに黒のスカートを履いている。

記憶を辿っても、面識があるとは思えなかった。

「・・・そうですけど、あなたは?」

シンも隣で不思議そうにその女の人を見ていた。

その人は、姿勢を正して頭を下げると「松山の妻です――」と名乗った。



マツヤマ?

誰だそれ?

患者?

わかんない。

そもそも、奥さんが居るような知り合いは、前田先生くらいだし。

えっと・・・、と状況が飲み込めないあたしに気付いたのか、その人はもう一度頭を下げてこう言った。



「松山 悟の妻です」

< 104 / 206 >

この作品をシェア

pagetop