桜の咲くころ
「ふわぁ~。お腹いっぱいだ」

ソファーの背もたれにドスンと身体を預ける。

「久々に二人でゆっくり飯食ったなぁ」

テレビでおどけるお笑い芸人に突っ込みを入れながら、他愛もない話をして笑う。

さっきまでの憂鬱な気持ちなんて、忘れてしまうほどだった。

元気づけてくれたのかな・・・。

チラリ、と、横に座ってテレビを見ているシンを見た。

「元気なった?」

視線をテレビに向けたままシンが言う。

「・・・元気になった」

「そ、良かった」

「ありがと」

ありがとう・・・こんなあたしを気遣ってくれて。

それは、シンにとって負担じゃないですか?

あたしは、隣にいても・・・いいのかな。

好きだから、好きすぎて、今度は不安が膨らんでいく。

自分に愛される資格があるのか、とか、シンの本当の相手はあたしなのか、とか。

いかんいかん、またマイナス思考になってる。

気分を上げるべく、手元のグラスを一気に飲み干した。

「あぁ~あ、飲みすぎじゃねーの?」

心配顔したシンがあたしを覗き込む。

「家だから大丈夫だもん」

シンだってかなり飲んでるじゃん。

ほぼ空になったボトルを見て口を尖らせる。



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