桜の咲くころ
「・・・同点引き分けだろ?」

そう言って、組み敷いた手に力を込めてあたしを見つめる。

「・・・・・・」

「俺、もう限界」

言葉を聞き終わる前に視界が遮られる。

感覚を慈しむような優しいキス。

そして次第に深くなっていくキスに、あたしももう限界だった。

――抱かれたい。

素直に従うしか出来なかった。

抱き合うだけで、頭を撫でてくれるだけでいいと思っていたはずなのに、シンの体温に触れるたびにどんどん欲深くなってる自分がいた。

唇から鎖骨・・・腕、背中・・・。

あたしの感覚を探るようにキスは繰り返される。

さっきまでの冷え切った体とは思えない位、あたしの体は熱をおびていった。

繰り返される刺激に、腕を押さえられたままのあたしは、首を振ってもがくしか出来ない。

シャワーの滴で濡れたTシャツを脱ぎ捨てて、シンの肌があたしに重なった。

初めて見た手術の跡・・・。

傷の大きさから、本当に大掛かりな手術だったんだと実感する。

生きて戻ってきてくれてよかった・・・。


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