桜の咲くころ
「じゃぁ、怒らせたお詫びにジュース買って」

「はぁーっ?何で?」

「喉、渇かない?」

「俺、金持ってないもん」

「あ、そ」

あたしはレッスンバックから紺色の財布を取り出すと自動販売機に向かい、コーラーとオレンジジュースのボタンを押した。

ゴゴンッ・・・

壁にぶつかりながら落ちてきたそれを片手に重ねて持つと、呆気に取られて見てるシンの元へ戻る。

「はい、どーぞ」

「どーも」

炭酸の強いコーラを、問答無用で手渡す。

シンがコーラが好きなの、あたし知ってるよ。

いつも会うときに飲んでるし、前に一度お父さんと家に遊びに行った時に出てきたジュースもコーラだった。

『うちの子、こればっかりなんで、すみません』

ってシンのお父さんが笑って言ってた。

ゴクゴク、と、まるで水でも飲むかのように流し込まれていく。

その喉元を見ながら、すごいなって驚くと同時に胸がキュンってなった。
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