桜の咲くころ
友達でいいなんて、気持ちはウソだった。

友達から聞かされる彼氏との行為のように、本当は抱きしめてキスして欲しかった。

でも、そんな事は口が裂けても言えなかったし、それを口にしてはいけないとブレーキをかけていた。

中学生のあたしには、あまりにも大人ぶった行為のように思えて。

あたし達は、あんな風に汚れてはいけないんだと言い聞かせた。

シンのお見舞いに行けないまま、新学期が始まって、その内高校生になって。

初めて告白された一つ年上の男の人と、あたしは付き合う事に決めた。

垂れた目元が、何度見てもシンの姿を思い出させてくれるから。

キスをされた時も、制服を脱がされていく間も、あたしはその彼氏の事なんて頭になかったんだ。

ただ、その目元だけを見て、この人はシンなんだ・・・と自分に言い聞かせていた。

でも、行為が終わったあとの姿を見て愕然とする。

気だるそうに仰向けに寝転ぶ姿は、自己満足した一人の男にしかすぎなくて。

でも、抱かれてる間だけは、目を瞑っている間だけは満たされるような気がしていた。
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