桜の咲くころ

「モモカ、何やってんだよ」

少し離れた所から、目の前の女の子を心配するような男の声。

その声を聞いて、あたしは再び頭を下げた。

「すみません、慌てて振り返ってぶつかったの、私なんです」

怪我もないのにしつこく謝るなんてどうなの?

いやいや、病院の近くだし、ここは低姿勢がいいって。

心の中であたしの分身達が会話する。

そうそう、変な噂たっても嫌だしね。

「私こそボーっとしてて、ゴメンナサイ」

「ホント、すみませんでした。頭上げてください」

紳士的な言葉に安心して、あたしは顔をゆっくりと上げた。

運命的、いや、これは衝撃的だ。

だって、目の前に申し訳なさそうな顔をして立っていたのは、紛れもなくアイツだったのだから。

あたしは突然の再会の驚きで、息をするのも忘れて立ち尽くす。

きっと顔なんてポカーンとだらしなく口が開いたままになってるだろう。

そんな身体の動きとは逆に、心臓はこれでもかという程に激しくバクバクと動きを荒くしていった。

「シン…くん?」
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