桜の咲くころ
舞い降りた罰
「ミカコ先生、お疲れ様でしたー」
「あー、お疲れでした。忙しかったねー」
仲良くなった看護婦と、ナースステーションで立ち話。
「ホント、寒さがヤバイですもんね」
「そうねー。風邪の患者も減らないし」
「インフルエンザ、来てます?」
「うん、季節的にボチボチ出だしたよ」
「あー嫌な季節ですねぇ・・・」
ガックリ肩を下げて、看護婦のナナちゃんが言う。
ナースステーションの窓から広がる中庭は、もう真冬の景色に変わっている。
夏に広げた葉を、全て冷たい風に飛ばされて、丸裸の体で立つ木々。
青々としていた芝も、色を茶色に変えて静かに眠っているように見える。
「先生、これから飲みに行きません?」
「これから?」
「熱燗とか」
「あたし、弱いから飲まないよ」
「えー、飲みそうなのに」
意外だという驚きの眼差しであたしを見るナナちゃんに「いや、ホント」と笑って見せる。
あの、首の曲がったワインボトル。
『弱いんだから飲まないように』
って語りかけてる気がして、あれから一滴もアルコールを口にしてない。
調子に乗って飲みすぎるクセも知ってるしね。