桜の咲くころ
あたし達の間に流れる沈黙を最初に破ったのは、モモカだった。
首を右に傾けながら、目をパチパチさせてあたしと見詰め合ったままのアイツの袖を引っ張っている。
その動作を、固まったままの視線の端で捕らえると、心臓の鼓動が一気にペースダウンを始めた。
…彼女、か。
念願の再会を一人で盛り上がって、ものすごい勢いで沈んでいく。
忙しい女だ、あたしは。
「あ、昔の友達で…」
アイツは、腕をオーバーに振りながらあたしと彼女を交互に見て言う。
まるで言い訳でもするかのようなシドロモドロの言い方。
「ミカコです。中学の頃のシリアイなんです」
あたしも後を追うように自己紹介。
知り合い…にアクセントを置いて。
友達、と言おうか迷った。
でも咄嗟に口から出た言葉は「シリアイ」。
「シン、久しぶりだね、元気そうじゃん」
心臓と胃を両手で鷲掴みされてるように苦しかった。
逃げ出したくなるほどに息が詰まって、見えない手が宙を必死でもがいてる。