桜の咲くころ
当直の医師が休む為の休憩室。

狭い空間に小さなベットが設置されてるだけの小部屋。

病院から出る勇気がなく、ナナちゃんに促されるままこの部屋に入った。

激しく打ち続ける鼓動のせいで、呼吸をするのがやっとだ。

クッションの堅いベットに腰を下ろし、握りしめた携帯を見つめる。

手が震えてるのは、恐怖からなのか。

耳に残ったサトルの声が、震えを増幅させてるように感じる。

・・・シンと別れて良かった。

働き出した思考が真っ先に導き出したのは、シンとの別れが正しかったという事。

少なくとも、あたしと距離を置いたシンに危害が及ぶ事はない。

いつからあたし達の事を見ていたのだろうか・・・。

逆に、見られていた事が、シンにとってもあたしに取っても良かったのかも知れないけれど・・・。

大丈夫・・・。

あたしは屈しない。

とりあえず、これからどうすればいいのかを考えなくちゃ・・。

警察は・・・何を言っても無駄だろうな。

不倫の末の・・・痴話喧嘩・・・か。

小さな溜め息が漏れる。

あ・・・。

奥さん・・・。




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