桜の咲くころ
「さっき・・・知らない番号で電話がかかってきました。俺の持ち物だから、戻って来いと・・・」

「・・・そうですか・・・・・・」

「彼、あたしやシ・・・友達の事をストーキングしてました。戻らないと、危害を加えられるかも知れません・・・」

「・・・・・・」

「あたしは、戻るつもりはないとハッキリ断りましたが・・・納得してはいないと思います」

「・・・突き放したんですか?」

「はい・・・」

「ハッキリ・・・」

「そうです」

「・・・ミカコさん?」

電話越しの口調が強くなる。

「はい」

「それは、すごく危険な台詞です。暴力事件の事を忘れたんですか?彼女からの別れ話に逆上して暴力を奮ってるんですよ!?独占欲の強いあの人に、そんな事言ったらあなたまで・・・っ」

責め立てる口調で、彼女はあたしの身を心配していた。

それでも・・・

「嘘は付きたくなかったんです」

このまま、逃げる手もあったのかも知れない。

身を守るため、周りを守るために彼に従って流される方法もあったのかも知れない。

でも、それだけはしたくなかった。

もう、自分に嘘を付いて・・・シンが触れてくれた身体を差し出す事はしたくなかったから。
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