桜の咲くころ
外は、真冬の冷たい風が乱暴に吹き付けていた。
顔に当たる風が、肌をチクチク刺しながらあたしの体温を奪って逃げる。
あたしは、人通りの多い大通りを選んで駅へと向かった。
日替わりのシフォンケーキと温かなコーヒーを味わうために。
以前と変わらない姿で迎えてくれたカフェ。
前と同じ、明るい窓際の席に座る。
注文を取りに来た店員が、ハーブティを勧めたから、あたしは素直に従ってコーヒーの変わりに注文した。
「・・・ミカコさん、ですよね?」
煙草を口に咥えると同時に背後からかけられた声。
以前も同じ事があったっけ、と煙草を唇に挟んだまま振り返った。
「あ・・・モモカちゃん・・・」
よく会うね、と言っても2回目だけど。
偶然にしては出来すぎた再会に、驚きが隠せない。
「久しぶりですね」
相変わらず可愛いフワフワの髪を揺らして近付いてくる。
「私、毎日通ってるから、いつか会えると思ってました」
柔らかな微笑をあたしに向ける。
あぁ・・・常連なら、いても不思議じゃないわ・・・。
「お邪魔します」
相変わらずの図々しさ。
でも、嫌じゃなかった。