桜の咲くころ


外は、真冬の冷たい風が乱暴に吹き付けていた。

顔に当たる風が、肌をチクチク刺しながらあたしの体温を奪って逃げる。

あたしは、人通りの多い大通りを選んで駅へと向かった。

日替わりのシフォンケーキと温かなコーヒーを味わうために。

以前と変わらない姿で迎えてくれたカフェ。

前と同じ、明るい窓際の席に座る。

注文を取りに来た店員が、ハーブティを勧めたから、あたしは素直に従ってコーヒーの変わりに注文した。

「・・・ミカコさん、ですよね?」

煙草を口に咥えると同時に背後からかけられた声。

以前も同じ事があったっけ、と煙草を唇に挟んだまま振り返った。

「あ・・・モモカちゃん・・・」

よく会うね、と言っても2回目だけど。

偶然にしては出来すぎた再会に、驚きが隠せない。

「久しぶりですね」

相変わらず可愛いフワフワの髪を揺らして近付いてくる。

「私、毎日通ってるから、いつか会えると思ってました」

柔らかな微笑をあたしに向ける。

あぁ・・・常連なら、いても不思議じゃないわ・・・。

「お邪魔します」

相変わらずの図々しさ。

でも、嫌じゃなかった。
< 148 / 206 >

この作品をシェア

pagetop