桜の咲くころ
でも、あたしは平然とした顔でアイツに語りかける。

「あ、うん。ほんと、久しぶり」

たどたどしい日本語で、アイツはあたしの目を見つめたまま小さく呟いた。

モモカは「お友達?お話のじゃまだね」と微笑むと、笑顔のまま手を振って私たちの前から去っていく。

その余裕じみた行動があたしの神経を抉って、余計苦しくなる。

「元気?」

「あたし?うん、元気よー」

「そっか。ここら辺に住んでんの?」

「うん、近くのマンション。シンは?」

「駅前のトコ…だから、少し離れてんね」

「ふーん、彼女と一緒に?」

「…いや、一人」

もう限界。

同じ土地に住んでることが分かっても、全然嬉しくない。

彼女…って否定しなかった。

やっぱり…モモカは彼女なんだ。

笑顔を作る筋肉が、だんだんと柔らかさを失っていく。
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