桜の咲くころ
「何か、あったんですか?守るって・・・何ですか?」

涙でグチャグチャになったあたしの頬に、そっとハンカチを当ててくれる。

この・・・この子を巻き込むわけにはいかない。

話してはいけない。

「・・・今は話せない。ゴメン・・・ね」

それ以上、モモカは何も言わず、俯いてカップに口をつけた。

あたしも、運ばれてきたカップを手に取る。

店員が勧めたハーブティーは、涙でしょっぱい味がした。

それでも、体の内側から、じんわりとあたしを温めてくれる。

頑張れと、応援してくれてる気がするのは、あたしの独りよがりだろうけど。

両手で濡れてしまった頬を拭い、決心して顔を上げる。

「モモカちゃん」

「・・・はい」

「お願い、聞いてくれる?」

「・・・何ですか?」

俯いた視線がゆっくり上がり、あたしの視線とぶつかる。

「シンの事、よろしくねっ」

上手に、笑えてる?

なるべく、悲しい顔はせずに・・・場違いな明るい表情で言えてるだろうか。

大丈夫、あたしは強くなれる。

あたしの代わりに、シンを理解して見守ってくれるモモカがいるから。

何も心配する必要はないんだと、自分に言い聞かせた。

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