桜の咲くころ
あたしがシンを思う気持ち――

奥さんがサトルを思う気持ち――

言葉に出さなくても、

その愛という形が見えなくても、

「絶対に消えないものも――あるんだよ、サトル」



皆、愛されたいと願い

その見えない物を必死で追い求める。

その温かな温もりで心を満たしてもらおうと、懸命に手を伸ばす。

愛されたい・・・だけじゃダメなんだよ。

一緒にいたいって思うだけじゃダメなんだよ。

自分が・・・自分がまず相手を大切にしなくちゃ・・・自分本位なままじゃ、愛される資格はないんだよ。

「消えるよ・・・。俺じゃない誰かを愛してるのなら、俺がそんな気持ちなんか消してやる・・・。ミカコは、俺の物だから――」

最後に耳に残った言葉は、今まで聞いたことのない、サトルの淋しげな呟きだった。

いつか、自分の愛し方が間違っていたと気付いてくれれば・・・。

いつか、自分一人に向けられた奥さんの愛情に気付く事が出来たら・・・

きっとサトルは幸せになれる。

そんな日が、来る事をあたしは願ってるよ・・・。

その思い、ちゃんと伝わる事が出来たかな・・・?
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