桜の咲くころ
「どうすんの、これ・・・」
白石さんに手伝ってもらってリビングに運ばれた箱。
一人残されたあたしは、途方に暮れてそれを見つめていた。
捨てるわけにもいかないじゃん・・・。
とりあえず、開けるのは先でいいや。
お礼の電話をバーにかけて・・・シンが取ったら気まずいし。
白石さんに、手紙でも預けよう。
リビングのテーブルに置かれた煙草を取り、カーディガンを羽織って立ち上がる。
部屋の中で吸っちゃおうかな・・・。
ベランダの窓に手をかけながら、ビュービュー風が吹く外に出るのを躊躇ってしまう。
開けた窓をすぐさま閉めると、換気扇を求めてダンボールをまたいだ。
チリッ・・・
かすかに耳に届いた音。
・・・恐る恐る足元を見る。
「・・・何?」
チ・・チ・・
かすかな金音と、何かがこすれる音。
体が・・・動かない・・・。
見つめた先のダンボールを封じてるガムテープが、勢いよく裂かれて、大きく箱が揺れた。