桜の咲くころ
パンとビール
警察からの帰り道。
一言も言葉を交わす事無く、あたし達は並んで歩いた。
シンも、何か言葉に表せない様なモノを抱えてるように思えた。
二人で一生一緒にいるという事が、こんなにも難しい事なのか。
笑って喧嘩して、それでも一緒に笑いながら眠りにつく・・・そんな当たり前の日常が、この先私達に訪れるのか。
暗闇の中、背後から刺すようにあたし達へ向けられた視線に気付く事もなく、あたしは黙々と足を交互に踏み出す仕草を繰り返していった。
「ミカコ、晩飯どうする?」
オレンジ色の街灯の下。
シンが思い出したように口を開いた。
「ゴハン・・・・・・」
疲れすぎて忘れていた。
ゴハンというフレーズを聞いて、初めてお腹が鳴り、空腹である事を知らせる。
「何か買って帰ろうか」
わざわざ今の時間から作るのもね、と、笑って言った。
大通り沿いにある、一軒のお弁当屋さん。
毎日たくさんの人で溢れかえっている。
仕事帰りのサラリーマン、一人暮らし風の男子学生。
作りたての油っぽい弁当を待つ後姿は、一様に疲れきって見える。