桜の咲くころ
「ここの唐揚げ弁当、旨いよ?」

入り口の自動ドアに張られた写真付きの大きな広告。

期間限定で380円!!と赤い字が添えられている。

「じゃ、買って帰ろうか」

あたしが微笑んで同意すると、シンも微笑んで「だな」と返した。

唐揚げ弁当が出来るまでの間、窓の近くに儲けられたイスに座って待つ。

外から見たら、あたしも疲れた人間の一人に見えるんだろうなぁなんて思って、少し嫌な気持ちになったりして。

シンが仕事を休んで一緒にいてくれるんだから、もっと楽しまなくちゃ。

警察の事は、もう諦めよう。

行くだけ行ったんだし。

その行動力は褒められるべき事だと思うし。

「ねぇ、帰りにコンビニ寄っていい?」

窓の外に行き交う車を眺めてるシンの顔を見る。

ん?と、ゆっくり顔をあたしに向けて「何買うの?」と首を傾げた。

「明日の朝のパンとね、ビール」

「ビールッ?」

シンは、細い目を縦に大きく開いて口をだらしなく開けている。

「いいじゃない、たまには」

アルコールの力でテンションを最大限に上げようと思ったから。

そんな意外そうな顔しなくてもいいんじゃない?

「飲めないくせに大人ぶりやがって」

馬鹿にした表情を見せて言い、やっと呼ばれたと、レシートを持ってシンはカウンターに向かった。


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