桜の咲くころ

運命を知る




あたし達は抱き合って眠り、お互いの体温を体に刻み付ける――




「行って来ます」

色違いのペアのマグカップ。

ほんのり赤みが差したあたしのカップを流しに置いて振り返る。

「今日は仕事なんだよね?」

「あぁ、週末だし」

「そっか。あたしも今日は病院の人と食事行くから」

「お、分かった」

寝癖がついたままのシンの姿に手を振る。

玄関に並んだ、大きな鈴のついた鍵。

二つならんだ片方をカバンに投げ込むと、もう一度「行って来ます」と声に出して外に出た。
< 176 / 206 >

この作品をシェア

pagetop