桜の咲くころ
運命を知る
あたし達は抱き合って眠り、お互いの体温を体に刻み付ける――
「行って来ます」
色違いのペアのマグカップ。
ほんのり赤みが差したあたしのカップを流しに置いて振り返る。
「今日は仕事なんだよね?」
「あぁ、週末だし」
「そっか。あたしも今日は病院の人と食事行くから」
「お、分かった」
寝癖がついたままのシンの姿に手を振る。
玄関に並んだ、大きな鈴のついた鍵。
二つならんだ片方をカバンに投げ込むと、もう一度「行って来ます」と声に出して外に出た。