桜の咲くころ
「なんかねー、運命を感じるよね。結婚するときは、僕がスピーチするからね」

ケラケラと、まるで冗談でも言ってるかのように楽しそうな顔で言う。

あの親切な研修医のお兄さんが･･･こんなオヤジになるのか、そう思ってあたしも笑った。


「外科はね、ミカコ先生のファンが多いから。僕が守ってあげなくちゃって思ったんだけど･･･連れて行ってくれないみたいだし、残念だな」

「先生は、外科の看護師が目当てでしょう？前に術後のカンファで『可愛い可愛い』ってベタ褒めしてたじゃないですか！」

呆れ顔で返したら、案の定「バレタか」という表情で舌を出して笑う。

シンに会えたのが奇跡なら、前田先生に会えたことは、運命だなって思った。

根拠なんてないけど、何となく、このメタボリックなオヤジを見てたらそんな気がしたんだ。

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表紙・目次

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