桜の咲くころ



「先生、遅いですよ!!!」

1階、正面玄関の脇にある受付の待合室。

同じ方向を向いて行儀良く並んだイスに座って、既にメンバーの大半が集まっていた。

その輪に、あたしも慌てて駆け寄る。

「ごめんなさい、前田先生を振り切るのが大変で」

そんな冗談を言って、大袈裟に疲れた表情を作って見せた。

ざっと見渡してみると、外科の男性ドクターが2人。

若い研修医と30代半ばの遊びなれた感じのドクター。

その周りに取り巻くように、20代の若い女性看護師が3名。

その横にはナナちゃん。

「ミカコ先生、忙しいのにスミマセンでした」

と、外科の看護師達が頭を下げる。

「あ、いいんです。私こそ、邪魔じゃないですかね?」

手の平をブンブン胸の前で振りながら愛想笑い。

「とんでもないです!!先生と一緒に食事行けるなんて、私達も嬉しいですから」

そう言って笑う彼女達は、本当に喜んでくれてるように見えた。

< 180 / 206 >

この作品をシェア

pagetop