桜の咲くころ

安っぽいドラマみたいに、手を握ってれば目を覚ましてくれる気がした。

俺達が離れ離れになってしまった桜の季節だから、余計に焦ってしまう。




「なぁ・・・ラーメン行くって約束したじゃんよ・・・」


痩せた、白い肌にそっと手を当てる。


「暑くなったら、ラーメンなんて食いたくねーし・・・」


動かないまつ毛に、そっと指でなぞる。


「このまま仕事行けなかったら、食いに行く金もなくなるし・・・」


長くなった前髪を、指先ではらう。


「絶対って・・・約束したじゃん・・・たまには約束守れよ・・・なぁ、聞いてんのか?」




一筋の涙が・・・・・・


ミカコの頬に落ちる・・・・・・


それは、ゆっくりと白い肌を伝い、枕にこぼれる。


< 200 / 206 >

この作品をシェア

pagetop