桜の咲くころ

奇跡だと思った。


奇跡であってほしいと願った。


弱々しく発せられた声の方を振り返り、恐る恐る覗き込む。


さっき触れたまつ毛が揺れ、ゆっくりと目が開く。


「ミカコ先生!!!」

離れて様子を見ていた太っちょの医者も慌てて駆け寄った。

「・・・・・・シン?」

弱々しく伸ばされた細い右腕。

それをしっかり掴む。

俺の手、震えてね?

俺の顔、おかしくね?

なんか、嬉しくて

なんか、すっげー嬉しくて

涙出ちゃって、鼻まで出そうで・・・

コードが沢山あるから遠慮しとくよ。

コードが外れたら、

その時は、絶対抱きしめてやる。

んでもって、ぜってー離さないから。
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