桜の咲くころ


マンションの駐車場に停められたサトルの車。

パールホワイトのクラウン。

何でこの車を選んだの?って前に聞いたら「清潔感と、謙虚さ」と口の端を上げて笑いながら答えたっけ。

サトル曰く、高級車に乗ってお客さんの所へ行くと「儲かってんね」とマイナスのイメージを持たれるらしい。

だからと言って古びたチープな車に乗って行くのも「ここの保険屋、大丈夫か?」と不安がられる。

客より高い車に乗るな、しかし安すぎる車にも乗るな。

と言うのが、彼の営業マンなりのこだわりなんだそうだ。

そして色は万人向けする清潔感のある白なんだって。

綺麗に毎日洗車して、車内も髪の毛一つ落ちていない。

…営業って大変なんだね。

ただ笑顔で保険勧めるだけでいいのかと思ってたよ。

あたしは免許こそ持ってるものの、車は持ってない。

通勤には使わないし、出掛けるのも電車やバスで充分だから。

勤務医なんて給料低いしね。

維持するのも大変でしょ?


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