桜の咲くころ
「足・・・捻ったみたい」

ウソ。

もう少し、一緒にいてもらう為のデマカセだった。

「・・・立てる?」

あたしは左右に首を大きく振る。

そんな姿を見て、シンは「肩、つかまれ」としゃがんでくれた。

「とりあえず、部屋まで送る――」

・・・優しいね。

シンの肩に掴まって立ち上がる。

ワザとらしい足取りでエレベーターに乗り込むと、部屋の階のボタンを押した。

ゆっくりと上昇を始めた四角い空間の中で、あたし達は二人っきりだった。

目を閉じれば眠ってしまいそうになる。

せっかくの良い夢なのに、眠ってしまったらもったいない。

話したい事が、いっぱいあるのに――。

何で、こんな時に限って頭が働かないんだろう・・・。

「・・・何で俺達再会しちゃったんだろうな」

あたしの体を支えながら、シンが呟く。

「へ・・・?」

「もう、絶対会えないと思ってたのに」

「・・・・・・だね」

「会えたと思ったら、走って逃げたし」

いや、それはショックだったからで――。

「次に会ったと思ったら、酔っ払って転んだっぽいし」

「酔っ払ってないですー」

あたしは膨れっ面を作って睨みつける。

「当直明けで、フラフラなの。昨日はほとんど寝れなかったの」

「当直?」

「そう、当直」

「何の?」


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