桜の咲くころ
あたしは返す言葉を一生懸命探した。

「・・・彼氏は・・・たくさんいるから一緒に住めないのぉ」

ワザと語尾を甘えた感じで延ばし、首を傾げて笑ってみせた。

「うわっ、軽いなぁー。刺されるぞ、その内」

「へへっ」

「何がへへっだよ。まったく」

呆れるように顔をしかめてあたしを見る。

いいの。

あたしが軽い女だと思えば、シンはあたしの事を好きになる事もなく、彼女ともめる事もないだろうから。

尻の軽い女友達・・・。

あたしのポジションは、その位でいい。

その方が・・・そんな振りしてる方が、あたしの心も諦めが付けやすいから。

「本当だと思ってる?」

「・・・ホントはどーなんだよ」

「さぁ・・・ヒミツ!」

あたしはワザとおどけて言った。



シンは、カップに残っていたコーヒーを一口で飲み干すと立ち上がる。

「ごちそーさま」

「もう帰るの?」

「ミカコも疲れてるだろ?とりあえず、俺も眠いし帰るわ」

そっか。

泊まってけばいいのに、という言葉を喉の奥で無理矢理押しつぶす。

「また、時間会えば遊び来るし。あ、でも、彼氏と鉢合わせは怖ぇーなぁ」

「バレない様にしとくよ」

「じゃ、携帯の番号、書いとくな」


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