桜の咲くころ
トゥルルルルル・・・・・・

1回・・・2回・・・

耳元で繰り返すコール音。

その音に反応するかのように、鼓動は大きくなっていく。

勢いで電話しちゃったけど・・・。

何て言う?

ご飯食べ行かない?

いや、唐突だし。

暇なんだけど、遊ぼうよ。

・・・これじゃ馴れ馴れしい?

つか、子供じゃん。

8回目のコール。

頭が軽くパニックを起しかけたその時。

電話は、無情にも留守番サービスセンターに転送されてしまった。

ガッカリした気持ちを安堵した気持ちが交差する中、あたしは無表情のまま小さく溜め息を漏らす。

携帯を握り締めた右手をだらしなく下に下ろし、呆けた表情のままロッカーに体を預けた。

・・・何やってんだ、あたし。

略奪なんて性に合わないって。

彼女との幸せな時間に、わざわざ割り込む必要もないじゃない。

友達として――。

いや、無事に生きてる事が分かっただけでも良かったじゃない。

それで充分でしょ?
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