桜の咲くころ

ピンクとブルー

「はぁ・・・・・・」

腹に溜め込んだ思いを吐き出すように短く息をつく。

それと同時に右手の携帯がブルブルと震え出した。

――?

シンがかけ直してきたのかと思った。

慌ててディスプレーに目をやる。

【サトル】

チカチカと光るその名前が、あたしの心を、また一つ落ち込ませた。

「――もしもし?」

「ミカコ?俺」

「どうしたの?」

「久々に夜時間が取れそうなんだ」

「うん」

「8時頃には終わるから飲まない?」

「うん・・・いいよ」

「仕事、大丈夫?」

「うん、大丈夫」

「良かった。じゃ、駅裏のピッコロで」

・・・ピッコロ?

そんな店、行った事あったかな。

「うん。じゃ、後で」

あやふやな記憶のまま、生返事で電話を切る。
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