桜の咲くころ
「お仕事帰りですか?」

「・・・え、あぁ、そうだけど」

「ここのケーキ、美味しいですよね」

「あ・・・初めて来たから」

「そうなんですか?じゃ、気に入ると思います、絶対」

コロコロと笑いをこぼしながら、モモカは一人ではしゃいでいた。

「お仕事、何してるんですか?」

運ばれてきたティーセットを受け取るあたしの仕草を見つめてモモカが言う。

何って・・・

「シンから聞いてないの?」

少し意地悪を込めたあたしの言葉。

そんな事、全然気にする事もなく「いえー聞いてないですよ」と笑った。

「この前もそうだったけど、ピシッとした格好されてるし大きなカバン持ってるし、社長秘書さんかな~と思って」

「いえ、医者です」

「えっ?お医者さんなんですか?すごーい」

クルクルの目を大きく輝かして子供のようにあたしを見る。

・・・何なの?

あたしに、何の用?

目の前の女がシンの彼女ってだけでもイラつくのに。

――イラつく?

――どうして?

・・・嫉妬?
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