桜の咲くころ
日替わりのシフォンケーキは、抹茶の香りがして、添えられた生クリームをつけると、さらに甘い香りが口いっぱいに広がった。

「おいしいでしょ?」

無表情で食べ進めるあたしを、モモカが覗き込む。

「うん・・・おいしい・・・」

「ミカコさん・・・あたし、邪魔ですか?」

少しトーンダウンした声。

あたしは、フォークを唇に留めたまま顔を上げた。

シュンとうな垂れた頭。

唇が、申し訳なさそうにへの字に曲がってる。

「いや、別に・・・」

ちがーう!

邪魔でしょ、あっち行ってよって言うんでしょう!

心の分身が暴れた。

でも、何となく嫌な子には思えなくなっていて。

甘いケーキのせいなのか、さっきのオーナーの魔法がかかってるのかは分からないけど。

時間つぶしには、丁度いいじゃないと自分を納得させた。

「今日は、シンとデートじゃないの?」

繋がらなかった携帯の事を思い出し、不意に尋ねてみる。

「・・・デート?」

アイスティーが入ったグラスをストローでかき混ぜるモモカの手が止まる。

今さらデートって間柄でもないのか、少し不思議そうな眼差しで首をかしげた。

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