桜の咲くころ
「週末だし、一緒に食事でも行かないの?」

「行きませんよぉ、第一、シンくんは仕事で夜はいませんし」

「それじゃ、彼女としては寂しいんじゃないの?」

「彼女?」

「・・・?彼女でしょ?」

「シン君がそう言ったんですか?」

「・・・えぇ、確かそう・・・」

あたしの言葉が終わらないうちに、モモカはフフフっと表情を和らげて俯く。

・・・何、幸せを実感してんだよ。

思わず悪態を付きそうになって、慌ててコーヒーのカップを口に運んだ。

「ほとんど一緒にいる事はないんですよ。たまに食事を作ってあげたり、買い物に付き合ってもらう位で。昼間は寝てる事が多いし、会う時間ありません」

満面の笑みで、そう答えた。

ふーん。

そうなんだ。

残りのケーキを口に運ぶ。

フワフワの食感が心地いい。

「ミカコさんは、彼氏さんとデートですか?」

逆に質問が飛んできた。

あたしは口の中に入れたケーキをゴクリと飲みこんでモモカを見る。

彼氏――ね。

「8時に店で待ち合わせをしてるんだけど――」

そう言って、ある事を思い出した。

場所、探してないじゃん!

「そうだ、モモカちゃん、知ってる?」

あたしが初めて名前を呼んだ事に喜んで、そして「何ですか?」と身を乗り出す。
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