桜の咲くころ
ピッコロ
モモカに地図を書いてもらって良かった・・・。
店の前で胸を撫で下ろす。
普通に探したんじゃ、絶対分からないもん。
居酒屋が乱立する細い路地を1本入った所。
店があると知らなければ、絶対こんな場所で曲がったりはしない。
薄暗い路地を歩き進めると、オレンジ色の灯りが迎える店。
いや、店と言うには変かな。
一見したところ、小さな倉庫だ。
建物の上から下まで繋がった大きな両開きの木の扉。
一人で開けれるのか?と不安になる大きさだ。
その扉に取り付けられた取っ手に下げられた看板。
【piccoro;隣の扉から】
ブリキで出来たそれを見つめ、さっきから首を傾げてるんだけど・・・。
隣の扉からって・・・。
大きな扉の横を見ても、出入り口になりそうな所は見当たらない。
だからと言って、その扉を引いても押してもビクともしない。
からかわれてるのだろうか?
薄暗さも手伝って、少し弱気になった。
RRRR・・・RR・・
「もしもし?」
「俺。今、どこ?」
「入り口まで来てるけど、入り方が分からない」
サトルからの電話。
助かったと、ホッと息をつく。
少しの沈黙の後、待っててと電話が切れた。