桜の咲くころ
「外で会うの、あまりないよねー」

グラスの中身は、甘ったるいカクテルだった。

唇の先を舐めて、少し嫌な気持ちになる。

甘いお酒は苦手だ。

甘い香りとアルコールの後味がどうも受け入れられない。

それに、今日は大切な荷物があるし。

チビチビ舐める程度にしておこう、そう思ってグラスを置いた。

「家ばかりも・・・なぁ」

サトルは胸のポケットから煙草を取り出すと、唇に咥えて言う。

あぁ、あたしを普通に抱くのが飽きたってことか。

ま、それでもいいけど。

あたしが火を付けてやるのを待ってたのだろうか?

サトルは一瞬チラッとあたしを見て、諦めたように自分で火をつける。

・・・ホステスじゃないから。

相変わらず甘えん坊なんだなぁと思った。

「何か食べる?飯、まだなんじゃねーの?」

「うん・・・ケーキ食べてきたから胃が重くて」

「ふーん、じゃぁ軽いもので・・・あ、お兄さん、メニューくれる?」

テーブル席を片付けてるバーテンにサトルが声をかける。

「ここ、狭いからバーテンとオーナーしかいないんだよ。だから軽い食事しかないんだって」

店のキャパから考えて、店員を多く配置する必要もないだろうと、あたしも納得する。

それにしても2人で回すのは忙しいんじゃない?と余計な心配をしてしまう。
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