桜の咲くころ
「だよな」

そう言って、少し淋しげに俯いた。

「俺、しばらく会えない」

「え?」

「他の営業所にしばらく行く事になるから」

「他って、どこ?」

「さぁ、海外かも知れないし、離島かもしれないし」

「何で?何かあったの?」

「ん、大した事ない。でも、絶対迎えに戻ってくるから」

・・・迎えに来る?

「ミカコは、絶対手放さない」

・・・どういう意味?

「酔ってる?」

「・・・かもな」

お願いだから、シンを目の前に、そんな事言わないで欲しかった。

別れ話だったらどんなに良かったか・・・。

プロポーズじゃないのに迎えに来るってのも、変な話だ。

やっぱり酔ってるんだろうと、あたしは笑い飛ばす。

「あたしは、自由でいたいから。誰の縛りも受けないよ」

「他の男に渡すのは嫌だなぁ」

「何言ってんのぉ、柄にもないこと言って」

「俺の縛りから、絶対逃げられない」

「はいはい、そうですねー」

まるで酔っ払いの親父だ。

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