桜の咲くころ
その後、真っ直ぐ帰るからと、バーにあたしを残してサトルは帰っていった。

今までにないパターン。

あたしの部屋に寄って帰るものだと思ってたのに。

何なんだ?

飲み初めから、いつもと違う感じだし。

飽きたから別れるとかでもなく、女々しい事言ったり、淋しげに笑ってみたり。

意味が全く分からなかった。

「あれ――彼氏?」

サトルの帰った後の席を片付けながらシンが話しかける。

視線はグラスに向けられたままで、あたしを見ないまま。

「――彼氏じゃない」

あんな会話聞かれてるくせに、彼氏じゃないと言ったあたしはバカなのだろうか。

でも、彼氏じゃないもん・・・・・・。

「ふーん。あの人、ミカコが来る前に5-6杯飲んでたよ」

「うそ?」

「あれ、甘いけど相当強い酒だから。何か辛そうに見えたけど」

「・・・ふーん」

何があったかなんて関係ない。

当分、サトルはあたしの前から姿を消す。

そして、淋しくなったあたしは、また別の男を・・・捜すだけなのだ。
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