桜の咲くころ
「本当に、ごめん・・・。もう、大丈夫だから・・・一人で帰れるから・・・歩いて、タクシー拾って帰れるから・・・」

胸が苦しかった。

迷惑をかける事に、心が耐えられなかった。

「は?」

「大丈夫だから」

「何言ってんの?」

後は、公園を抜けて、住宅街に沿ってマンションまで行くだけ。

シンの家は駅の近くだよね?疲れてるのに、これ以上遠くまで送らせるなんて出来ないよ。

モモカが・・・心配するでしょう?

「しっかり歩くよ。大丈夫。迷惑、かけれないし、心配するだろうし」

頭の中は霧だらけなのに、言葉はどんどん出てくる。

「ごめんね。大丈夫・・・」

その台詞と同時に、あたしは手を離した。

甘えてちゃいけない。

あたしは、一人で歩かなくちゃ・・・。

目が閉じそうになるのを精一杯見開いて笑顔を作った。

そんなあたしの肩にシンが手を伸ばす。

トンッ・・・

不意に押された右肩。

それと同時に、揺れる視界。
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