桜の咲くころ
多くの病気の人を助けたいとかそんな当たり前の事より、アタシはただ…アイツに会いたかっただけ。

医者としたら、最低なのかな。

内科を選んだのだって、会える確立を上げるため。

小児科だったら、子供の親として来るんだろうし、そんな辛い現実を見るのは嫌だった。

整形や外科も確立として下がるし…受診科の確立からして内科が一番打倒だと思ったから。

そんなアタシを、リカはいつも「アホ」と呼ぶ。

いい加減にして、他の男捜せってコンパに何度も誘った。

その度に、出会う男と身体を重ねてみるものの、やっぱり満たされることはなくて。

出会って離れてを何度か繰り返し、今のサトルに辿り着いた。

この先、満たされる事はあるのだろうか。

そんな不安がグルグルと忙しく身体を駆け巡る。


「もしかしたら、就職で県外に出ちゃってるんじゃないの?」

目の前に置かれた春野菜のクリームパスタをフォークの先でグサグサ刺す手が思わず止まる。

パスタが可哀想よ、とリカが苦笑いを浮かべてあたしの動きを制した。

「県外…、考えたくないけど…どうだろう」

「そして、彼女でも作って結婚してるかもしれないじゃない?私たち、もう29よ?」

落ち込むあたしに追い討ちをかけるようにリカは得意気に続ける。
< 8 / 206 >

この作品をシェア

pagetop