桜の咲くころ
淋しい事を理由に、自分を大事にしなかったバチが当たったんだなと思った。

これから、またシンと会えるんだなぁと幸せに浸った時間はあまりにも短くて。

今度は、確実に意志を持ってあたしの前からいなくなるんだ・・・。

あぁ、そうか。

そして、彼女じゃないモモカと恋に落ちて、幸せになるのか。

・・・シンが幸せになるのなら、それでもいいかなぁ。

噛み締めた唇が切れて、血の味が口に広がった。

悲しいけど、これが現実で、あたしはその自分がした罰を受け入れなくちゃいけない。

ねぇ、シン。

あなたもそう思ってるんでしょう?

だから・・・だから何も言ってくれないんでしょう?

砂の付いた手で、そっと頬を撫でてみる。

やっぱり涙なんて流れてなくて、ただそこはザラついた砂の感触を感じるだけの皮膚があるだけだった。



どの位時間が経ったのだろう。

5分?

30分?

座り込んだあたしの両脇に腕が通され、立たされる。

思考が止まったあたしの体は、思いのほか言うとおりに動いた。

目の前で閉じられる扉。

鍵を閉め、チェーンをかける男の手。

そして、無言のまま、あたしは真っ暗なバスルームに引っ張り込まれた。
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