桜の咲くころ
「・・・お前は、彼氏じゃない男にも簡単に体を許す女だったのかよ」

責めるように、悲しい声。

「・・・・・・」

「こんなガラガラの隙だらけだから、男に付け込まれんだろっ」

握られた腕が、さらにきつく押し付けられる。

・・・隙だらけの女に・・・・・

こんなガラガラの心に誰がしたのよ。

「俺の事を・・・好きだと自惚れて・・・バカみて・・・」

月明かりに照らされて見えたシンの表情。

苦しそうで、辛そうに目をきつく閉じている。

ねぇ、シン。

あたしは、昔からずっとシンの事が好きだよ?

それはこれからも変わらない。

でも、好きすぎて、淋しかった。

触れて欲しいのにシンはいなくて。

だから・・・

「みんな・・・シンの代わりだっ・・・た」

「・・・?」

「淋しさを埋めてくれるなら・・・誰でも良かった」

でも、満たされる事はなくて。

自暴自棄な自分に嫌気が差して、それでもシンを欲する心は止められなかった。

「じゃぁ・・・俺が埋めてやるよ・・・」

切れた唇に落ちてきた柔らかな感触。

こんな形で・・・幻滅したあたしにキスしないで・・・。

同情なんか・・・いらない。

あまりにも優しい感覚に、塞き止められていた涙がドッと溢れ出た。
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