桜の咲くころ
首筋に下りてきた優しい感覚に、思わす体が反応する。

それと同時に甦るサトルの言葉。

「ウラギッタラ コロスヨ」

生々しく耳に残ったその言葉に、反射的にシンの体を突き放した。

「何だよ、訳ワカンネーって」

「ゴメン、違うっ・・・」

ガタガタと震える体を両手で支え、一生懸命落ち着こうと息をした。

「シン・・・ダメだよ。あたしと関わっちゃいけない」

「・・・何だよ、それ」

「あたしみたいな女と・・・」

「・・・俺の気持ちはどうでも良いわけ?」

暗闇の向こうから聞こえる静かな声。

「・・・え?」

「同じようにお前を想って探して。やっと会えたと思ったら、変な男に絡まれるような隙だらけの女になってて。それでも、そんな女を守りたいって思う俺の気持ちはどうでもいいのかよ」

「・・・でも、シンに何かあったら」

生きていけない。

そう言おうとした唇をシンが塞ぐ。

「俺も同じだから。もう子供だった頃と違うから。そばにいるから――」

あたしの涙の跡を、シンの唇が伝う。

「あんなヤバイ男の所になんか行かせない」

俺が――守る―――。

きつく抱きしめられた胸の中、シンの体が、すごく熱かった・・・・・・。
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