桜の咲くころ

指と指




「ねぇ、何でお風呂場に連れて行ったの?」

シンの暖かい胸にくっ付いたまま顔を上げる。

冷静になって思い返したら、おかしな話だと思った。

「混乱してっから、頭冷やしてやろうと思って」

「・・・でも、お湯だったよ?」

「間違えたんだよ」

「・・・シャンプーしたのは?」

「頭がボサボサだったから」

「・・・服、来たまんま?」

「・・・・・・」

「シンも着たまま?」

「・・・・・・」

「・・・あ、恥ずかしかったのか」

冷静なのか、照れ屋なのか、そう考えたら少し笑うことが出来た。

「実家にいる犬のロッキーだと思おうとした」

「へ?」

「こいつは、ロッキーだ。部屋に入れるならシャンプーして足洗って・・・って考えて・・・理性を保とうと・・・」

「犬・・・」

「じゃないと、そのまま怒りに任せて出て行ってしまいそうだった」

「・・・・・・」

「理由をちゃんと聞いてから、って自分を言い聞かせて押さえたのに」

「ん・・・?」

「お前がいきなり脱ぎだすから、他の理性を抑える方が大変だった・・・」

そう言ってあたしの背中に回した腕に力を混めた。

「何で、あぁ無防備なんだよ」

「・・・・・・」

「俺、男として見られてないのかって一瞬怯んだ」

「あぁ・・・何も考えてなかったよ」

「・・・だろうな」

「シン・・・ありがとね。もう、寝よう・・・おやすみ・・ね」


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