桜の咲くころ
「仮に再会したとして、あんたはどうしたい訳?愛をはぐくんで、結婚して?いやいや、現実は甘くないって。もしかしたら、すっごく崩れてるかも知れないよ?」

同窓会で再会したら、クラスのアイドルがただのオバサンになってたなんてよくある話じゃない、と付け加えると、リカは手元の水を一気に飲み干した。

そう。

そうなのよ。

もう29だし、結婚しててもおかしくない。

家族がいて、幸せになってるかもしれない。

あたしとの約束なんて、覚えてないだろうし、もしかしたらあたしの存在すら頭に残ってないかも知れないのに。

…あたしは、とことんアホだ。

「大好きだった人と再会して、想像と違ってたらリカ、どうする?」

「私?そりゃー鼻で笑い飛ばして自分を呪うわ」

「センスなさすぎぃぃって?」

「いや、時の流れをよ」

「自分だって小じわあるくせに」

「あんたもね」

あたしたちは自分の顔を手で覆い、そして指の隙間から目が合うと、声に出して大きく笑った。

そんなあたし達を見て、周りの客が不思議そうに眺めている。
< 9 / 206 >

この作品をシェア

pagetop