桜の咲くころ
「リカぁ!!」

そうだとは思ったけど、受付のイスに足を組んで座ってる後ろ姿で確信する。

ボブに整えられたサラサラの栗色の髪の毛と、堂々たる態度。

リカじゃなくて、他に誰がいるというのか。

「久しぶり!」

「うん、ホント。元気そうね。電話しようと思ったんだけど、携帯、ロッカーでしょ?」

「近くまで来たって、用事だったの?」

「うん、ケーキ屋にね」

「ケーキ?」

「彼の誕生日ケーキの予約。店まで限定しやがって、生意気なのよね」

そう言って笑う親友は、とても幸せそうに見えた。

「社員食堂にする?外の芝生で食べる?」

あたしの問いかけに、リカは左手に持った紙袋を高々持ち上げて得意気に笑った。

「・・・何、それ」

「ANGELOの、クラブサンドセットとアイスコーヒーでーす」

「キャー!!マジで?並んだの??」

リカの言うANGELOとは、人気の洋風ランチの店で、テイクアウト用に作られたクラブサンドは並んでも手に入れにくいと言われる限定メニューだ。

だからか。

後姿がいつもより自信満々に見えたのは。

「じゃ、外で食べよ」

あたしは急ぐように親友の背中をおして、芝生の覆う中庭へと足を急がせた。
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