桜の咲くころ
木陰に設置されたベンチの一つに、あたし達は並んで座る。

患者達は、昼食で部屋に戻っているから誰も居なかった。

その開放的な芝生に目を細めて大きく伸びをする。

ジャーン、とリカが得意気に広げた四角い箱。

大きめのサンドウィッチと、これまた大ぶりのポテト。

そしてサラダとデザートが可愛らしく詰められていた。

「いただきまーす」

大きく口にほお張って「んーまい」と声を上げる。

そんなあたしの様子を見て、リカがプッっと噴出した。

「思ったより全然元気そうね」

「・・・?」

「前に報告の電話受けたときはビックリして血圧が上がったわよ」

「あぁ・・・」

「大丈夫なんでしょ?」

リカは、念を押すようにゆっくりと問いかける。

「うん・・・一応、今のところ」

大きなポテトを指でつまみ上げながら、曖昧に答えた。

「家も、職場も知られてるからね・・・確かに怖いわよね」

「そう。ただ、話して納得するのか、危害を加えるのか分からないから警察にも・・・ね」

「でも、昔の想い人が守ってくれるんでしょう?」

その言葉に右側に顔を向けると、リカはこちらを向いてニンマリ笑った。

「何か、ドラマよねー。幸せになりなね、って幸せか」

冷やかすように脇腹を突くから、あたしは大袈裟に「痛いなぁ」と押し返す。

「ずーっと好きだった人に抱かれる感覚ってどんな感じなのかしら」

「さぁ・・・気持ちが入る分いいんじゃない?」
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