☆一番星☆
「あれ、絢華、もしかして出かけるところだった?」




部屋の隅には、バッグやお供え物を準備してある。


それを見つけた紗羽が、申し訳なさそうに言った。




「パパのおはかまいりにいくんだ!」




あたしが答える前に、蒼太が嬉しそうに答える。




「そっか、パパに会いに行くんだ。ごめんね、そんな時に来て」


「ううん、かえって良かったよ。出たあとだったら会えなかったんだもん。お墓参りはあとでも行けるし」


「ん、……もう三年だっけ?」


「うん、早いよね。時間ばかりが過ぎてくもん。あたしの気持ちだけが、追い付かないの」




また涙が出そうになって、顔を歪めた。
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