今夜、俺のトナリで眠りなよ
 一樹君も、私たちのやり取りに気付いているはずなのに、聞こえていない振りをしていた。

「いえ。私一人で決めたの」

 一樹君は何も知らない。相談してないから。

 きっと怒るわね。また勝手に暴走してって思っているかも。

「僕たちは順調に結婚生活を送っていたはずだけど」

「愛人がいるのを責めたりしません。それをネタに慰謝料も請求するつもりもありません。だから別れてください」

「断る。僕は離婚するつもりはない。愛人とも別れない。君も愛人を作ればいい。僕も君と同じ、愛人ができても責めないよ」

 私は首を横に振った。

「私は幸せになりたいんです。今の生活に、幸せは望めないから」

「話はそれだけ? 僕は離婚するつもりはないから」

 優樹さんは、スッと席を立つとリビングを出て行った。
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