今夜、俺のトナリで眠りなよ
―一樹side―
 俺は社長室のソファに座って、雑誌を読んでいた。

 会議から戻ってきた兄貴が、ドアを開けて俺を見るなり、顔の表情が硬くなった。

 兄貴の後ろには、秘書兼愛人の谷島美咲が立っていた。

「どうしてここに一樹がいるんだろう」

「話があるから決まってんじゃん」

「僕は忙しいんだ。怠け癖のついた学生とは違うんだよ」

「忙しい振りをしているだけだろ」

「何だって?」

 兄貴が、心外だと言わんばかりに眉を引き上げた。

 俺はにっこりと笑顔で返すと、手に持っている雑誌をテーブルに投げた。

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