今夜、俺のトナリで眠りなよ
「駄目。曖昧にしたくないの」

 私は床に膝をつけると、一樹君を見上げた。

 一樹君が、困った顔をして眉を寄せた。

「知らないほうがいいと思う。きっと桜子さん、気にすると思うから。俺に気を使って欲しくない」

「知らなくても気にするわ」

「そうだろうけど。知ってしまったほうが、俺に罪悪感を覚える。だから話したくない」

「それほどのことをしてくれたのに、知らないままでいたくないの」

 一樹君は「ふう」と息を吐いた。

「親父の遺言書をチラつかせて、ちょっと脅しただけ。俺にとったら、大したことじゃないんだ。だから……気にして欲しくない」

「何をどう脅したの?」

「参ったな」と一樹君が、後頭部をガシガシとかいた。
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